<前回(その2)はこちら http://wiper-ito.hatenablog.com/entry/2017/05/04/113438>
彼女の身体は4つに割られた。
いや、割られたのではない。
割ったのだ。
僕が、
僕が、割ったのだ。
僕の中で二つの悪魔が戦っていた。
ー 彼女の身体を引き裂いてしまいたい。そしてその肢体を堪能したい、その内側までも
ー 彼女を今すぐひとつになってしまいたい。僕の粘膜で彼女を感じたい。
どうやら前者が勝ったようだ。
まな板の上で、鋭く裂かれた彼女が横たわっている。
その痛ましさと美しさが混在した姿が、僕の脳の味覚野を嫐る。
肚の底から本能的に湧き上がる食欲に耐え、今、彼女は僕につまみ食いされず確かに存在している。
次の工程は -
それを思い出した瞬間、
一瞬、
意識が遠のいた。
直後、全身を血液が猛烈に駆け巡り始めていることに気がついた。
熱い。
熱い、熱い。
身体が、熱い。
興奮に、全身が震え、汗が吹き出ることを抑えられなかった。
全ては、次の工程を思い出したばかりに。
「縛る」
僕 は 彼 女 を 縛 る
縛るのだ。
これは現実だ。
ついさっきまで生命と希望に満ち溢れていた彼女を、引き裂き、さらに縛り上げる。
嗚呼!
僕はなんという下郎か!
笑いが止まらない ー
神よ、見るが良い!これが人間だ!
さぞかしあなたは満足であろう?!僕はあなたの作ったこの世界を楽しんでいるよ、狂おしいほどにね!!
テーブルの上で、荷造り紐の束が、僕を冷たく笑っている。
やっぱり今日も縛れなかった。
ワイパー